「いのちを考える会」「やさしさに手をつなごう会」「動物未来」「NPO法人 猫
の代理人」「動物愛護支援の会」「生きものたちの集い」さんが、武田薬品湘南研究所の大量動物実験に反対する署名約5千筆を集められ、5月8日、要望書とともに環境省と厚労省に提出されました。
また、各省30分ほど面談の時間を頂き、担当職員との意見交換も叶いました。
また、面談が終了したあとで藤沢の住民の方々を囲み、情報交換などの交流を行いま
した。
*「いのちを考える会」のブログもご覧下さい。
以下、要望書の内容です。
動物実験と環境汚染に対する行政指導と情報公開についての要望
細野 豪志 環境大臣
小宮山 洋子 厚生労働大臣
平成24年5月8日
【1】国は、『動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針』
(平成18年10月31日環境省告示第140号)の「実験動物の適切な取り扱いの推進 講ずべき施策」のイ「国は、実験動物飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の遵守状況について定期的な実態把握を行なうこと」に基づき、
●実験に使用する動物の種類
●数
●飼養の福祉環境
●実験の内容
●購入ルート
など、個々の動物実験関連施設の実態を把握してください。その情報を公開してください。
【2】国は、今日国際的に普及し定着している規範である「3Rの原則」
●Replacement生きた動物を使わない方法に代替する
●Reduction動物の使用数の削減
●Refinement苦痛の軽減
が、個々の動物実験関連施設においてどのように実行されているのか、実態を把握してください。 その情報を公開してください。
( 例 2010年9月改正された最新の『EU実験動物指令』などと照らし、
●事前に代替法が適用できるか検討したうえで、3Rの概念に基づいた方法を選択する、試験管内試験など他の方法を取り入れて動物の数や動物に与える苦痛を削減する取り組み
●失敗した実験のデータを他の研究機関と共有することで無駄な重複を減らす取り組み
●一個体を繰り返し実験に使用すれば動物の使用数は減るが、その個体の生命の質は下がる。この矛盾に考慮した取り組み
●毒性試験などで従来の死に代わる人道的なエンドライン(安楽死)を配慮する取りみ
●痛み、苦しみ、ストレスの上限と、実験に使用してはいけない動物種を設定し、激しい痛み、苦しみ、継続する苦痛を伴う処置を改善・禁止する取り組みについて
●その動物の種本来の行動、社会的な必要に見合う飼養環境への取り組み
●動物には尊厳という価値がある、動物実験は人間・動物の健康と環境に必ず利益をもたらし、代替法がない場合だけに限るべきである、という基準への取り組み)
【3】国は、動物実験に関して国際的なハーモナイゼーションにも考慮して、「3Rの原則」が法的拘束力をもって機能するように、
●公正な第三者による査察制度
●実験者の免許・資格・登録制
●動物実験関連施設の免許・許可・登録制
●実験計画書の免許・許可・認可制
●記録の義務
●委員会設置の義務
●罰則 などの法規制をととのえてください。
(英、独、仏、米、オーストラリア、韓国などには上記の規制があります。米、韓国は実験者の規制はなし)
また、法規制をおぎなって「3Rの原則」が実行され、動物の福祉が向上するようにどうぞ行政による指導、バックアップをお願いいたします。
査察の際には、施設と利害関係のない専門機関か専門家、及び動物の福祉について知識のある第三者を同行してください。
【4】国は、動物実験関連施設周辺の環境が保全されるように行政指導をしてください。
大気汚染・水質汚濁防止対策、化学物質の安全管理対策、遺伝子組み換え実験の安全管理対策、騒音・悪臭防止対策、災害・事故防止対策、地震対策、安全教育対策など、施設の安全管理について、施設と周辺住民とが協議できるように指導してください。
排気中の微生物検査・排水中の化学物質・微生物・遺伝子組み換え生成物検査など住民と協議のうえ基準を決め、情報を定期的に、またはリアルタイムで開示してください。
【5】国は、動物実験に関して、たとえ科学の名のもとであっても倫理的に行なってはならない限度について、わが国としての考え・基準を作ってください。残酷な内容の動物実験を禁止してください。
【 数の問題 Reduction 】
昨年2月、神奈川県の藤沢市と鎌倉市境に「武田薬品湘南研究所」が完成し、稼働を始めました。動物実験施設としては東洋一の規模であり、7棟ある動物実験棟は高さが43m、10階層の5階建て、延べ床面積140000㎡、東京ドーム2.5倍分のスペースの大規模なものです。
実験動物焼却炉は一日900kgを焼却可能であり、(住民の反対で当面は焼却を外部委託。委託先は非公開)、大量の動物実験が示唆されています(動物の種類・数などは非公開)。このような大量動物実験は、3Rに真摯に取り組み動物実験を減らし
いこうとする世界の先進国の流れに明らかに逆行するものです。
さらに、実験動物の数について、当研究所は、「事業規模が拡大し研究も多岐にわたってきており1プロジェクトで使う数を減らすことができたとしても全体数としては増えている」と、逆に実験動物の数を増やしていることを明かしています。
現動物愛護法には「3Rの原則」が名文化されているものの、義務条項は「Refinement苦痛の軽減」のみであり、かつ3R全部に「研究の目的を損ねない限り」「できる限り」といった前提がついているため、実効性がありません。
武田薬品湘南研究所の大量動物実験は、こんな日本の現状を象徴しているケースです。
日本一国で実験に使用される動物の数(年間約1000~2000万匹・2004年度実験動物協会販売数・日本実験動物学会自家繁殖動物使用数アンケートより推計)
が、
EU27カ国全体で実験に使用される動物の数(年間約1200匹・2008年欧州委員会発表)に匹敵するほど多い、しかもEUのデータは正式に情報公開された数字だが、日本はそもそもの実態が不明である、という現実は変えていくべきです。
どうぞ行政指導による改善をお願い致します。
【 内容の問題 Refinement 】
SCAWの「倫理的基準にもとづいたヒト以外の動物種を用いた医学生物学実験の苦痛分類」のカテゴリーDまでが、倫理的に許される実験の範囲とされ、カテゴリーEは国の方針として禁止されているケースがあるようですが、日本では実験関係者による「自主管理」に任されています。
日本にも、カテゴリーEなどの苦痛度の高い実験について、国の考え・基準が必要です。
広く国民からも意見を募り公の場での議論をもうけてください。
【 代替法の問題 Replacement】
代替法の研究開発の分野について、前述の武田薬品を例にとると、日本を代表する製薬企業でありながら日本動物実験代替法学会の賛助会員にはなっていません(2011年9月時点)。
湘南研究所の実験関係者1200名のうち、動物実験関係者400名、
代替法の新規開発関係者100名と、依然として動物実験が中心になっています。
一方、欧米の代替法への取り組みを見ますと、2004年以降、多くの代替法がOECDでテストガイドラインとして認められています。
例えば、代表的なものは、生きたうさぎの眼を使う実験の代わりになる代替法ですが、
日本では、まだ受託業者の広告にうさぎの眼を使った実験が紹介されています。
代替法がある実験については代替法のほうを行なうように行政指導をお願いします。
JaCVAM(Japanese Center for the Validation of Alternative )への支援など
を通じて、新しい技術の確立によって動物の犠牲を減らしていけるよう、舵取りをどうぞお願い致します。
署名呼びかけ人
「いのちを考える会」
「やさしさに手をつなごう会」
「動物未来」
「NPO法人猫の代理人」
「動物愛護支援の会」
「生きものたちの集い」