平成24年5月30日
1 第180通常国会において、動物の愛護及び管理に関する法律(以下、動物愛護管理法)が改正されることになっており、現在、素案策定作業は最終段階とされている。このなかで、実験動物に関する法規制(以下、実験動物規制)が盛り込まれるかどうかが焦点の一つとされているようである。
この実験動物規制について、動物愛護管理法の適用外とし、かつ環境省所管ではなく、医療薬務行政を管轄する厚生労働省所管として措置すべきとする意見が台頭しているとされている。
その狙いは、動物実験を動物愛護管理法の規制から外すことにより、愛護動物を同法による保護対象から除外し、実験を容易に行い得る現行体制を墨守することにあると断定せざるを得ない。
2 動物実験は、意志も感情も備わった生命を持った動物に対して凄惨を極める方法で生体実験を行ったあげくに殺傷して終わるというものである。
ヨーロッパの多くの国々では、既に実験動物規制が採用され、社会通念となっている。動物実験を行うことのできる者、実験施設、実験計画、実験動物の飼育施設等については、免許制や許可制を採用している例が多い。
先進国といわれる国々のなかで、何ら法的規制を行っていないのはわが日本だけであり、全体の産業規模さえ把握できず、初歩的な調査統計さえ不能な状態にある。
動物実験を臆面も無く積極的に肯定する動物実験医学者等、この意向に沿って動く議員諸氏は、彼我の生命に対する良心と技術の差を悟るべきといわざるを得ない。
3 動物実験は、人体に有害な薬物や微生物を用いる例も非常に多いと考えられ、動物実験施設から外部にそのような薬物や微生物が漏出する可能性もある。従って、動物実験施設の周辺に居住する住民の健康、生命に大きく関わることになるので、当該施設で行われている実験内容を把握することは、周辺住民の知る権利として当然認められるべきである。この場合、行政が動物実験施設、実験内容等を把握し、住民に対して情報提供することは住民の健康、生命を守る観点から重要な意味がある。
4 実験動物規制は昨年、環境省が実施したパブリックコメントにおいても改正課題として挙げられた。それにもかかわらず、実験動物を厚生労働省所管の法律によって措置すべきとする意見は、これまで平然と動物実験を行ってきた医学者、製薬業界、実験動物供給業者等の利益を代弁して出されているものである。
実験動物規制を支持する世論が強いと見るや、最終段階で猛烈な巻き返しを図り、実験動物規制を動物愛護管理法の適用外とする企図は、生命を慈しむ国民の願いを蹂躙するものであり、その政治的所為は政治家として責任が問われ、洗礼を受けざるを得ないものである。
5 実験動物規制は、動物が意志も感情も備わった生命を持った存在であることを謳った動物愛護管理法によって行われるべきである。それとは別個に容易に動物実験を行い得る法律を制定することは絶対にあってはならない。
ここに、全国動物ネットワークは強く抗議を表明する。
以上
動物ボランティア団体全国民間ネットワーク
(全国動物ネットワーク)
代表代行 鶴田真子美
〒305-0051 茨城県つくば市
(坂本博之法律事務所内)