● 「生産、販売、廃棄」の原則そして動物愛護
私たち身の回りには、「生産、販売、廃棄」の循環があり、これはどこにもある大原則です。それが「犬猫の生産、犬猫等販売」があれば「廃棄」があるはずで、犬猫を物とすれば「廃棄」は当然で、この原則に従います。しかし、犬猫は物ではありません。物では無いのに、物として扱っている。大きな問題です。
動物愛護法では「犬猫の生産、犬猫等販売」に取って付けたように愛護が付加しています。
以下条文
(犬猫等健康安全計画の遵守)
第二十二条の二 犬猫等販売業者は、犬猫等健康安全計画の定める ところに従い、その業務を行わなければならない。 (獣医師等との連携の確保) 第二十二条の三 犬猫等販売業者は、その飼養又は保管をする犬猫等の 健康及び安全を確保するため、獣医師等との適切な連携の確保を 図らなければならない。
(終生飼養の確保)
第二十二条の四 犬猫等販売業者は、やむを得ない場合を除き、 販売の用に供することが困難となつた犬猫等についても、引き続き、 当該犬猫等の終生飼養の確保を図らなければならない。 |
犬猫等販売ならば、生産、販売、廃棄の流れの原則があり、ここの「廃棄」 に愛護の精神を付加しなければならないはずで、そこで、第二十二条の 四 当該犬猫等の終生飼養の確保図らなければならない、 があります。 だが、経済原則からはできるはずがなく、そこで、第二十一条の三 「適切な措置を講ずるよう努めなければならない」が、以下にあります。 |
(動物を取り扱うことが困難になつた場合の譲渡し等)
第二十一条の三 第一種動物取扱業者は、第一種動物取扱業を廃止する場合その他の業として動物を取り扱うことが困難になつた場合には、当該動物の譲渡しその他の適切な措置を講ずるよう努めなければならない
犬猫を生産、販売する業者が第二十二条の四 にある、当該犬猫等の終生飼養の確保ができるのか、できないとすれば、どこででも第二十一条の三の動物を取り扱うことが困難になる、を考えなければならないでしょう。
経済原則と動物愛護が正面衝突してそのまま動物愛護法にのっています。
● 犬猫等販売は「生産、販売、廃棄」の循環に逆らえない。
犬猫等販売は経済原則に従うとしなければならないでしょう。そして、改めて、動物愛護から見たとき、「廃棄」に愛護ができるのかも考えなければなりません。
第二十一条の三の「適切な措置を講ずるよう努めなければならない」はこれも経済原則に従うはずとすれば、適切な措置は不要になった犬猫の殺傷、それしか無いことになるでしょう。それは無法の世界です。
このままでは動物愛護法は形骸化します。私たち動物ボランティアは動物たちを守るための動物愛護法、その法律を守り育てていかなければなりません。
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◆栃木・犬70匹遺棄事件について◆
<記事>
12月2日号の雑誌「FLASH」に、栃木県鬼怒川河川敷で40匹・那珂川町山中で30匹、合計70匹の犬遺棄事件について、殺して捨てた男性の告白記事と、亡くなったばかりの犬の写真が掲載されている。
それによると:
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・殺して捨てたのは、栃木県内の元ペット店店員(30代)、現在無職。
・10月20日ごろ、ブリーダー廃業予定者から犬を引き取ってほしいと電話を受ける。2歳から5歳の成犬で、トイプー、ミニチュアシュナウザー、ダックスなど7種、それぞれ10匹くらいを、引き取り料100万円で受け取ることになった。
・10月28日、2トントラックを借り、工事用パネルで犬用の箱を3箱作る。
(知り合いのペット業者らに連絡し、引き取った犬の預け先を決めたうえで)愛知へ向かう。
皮膚病などですでにやせて衰弱していた70匹の犬を箱に入れた。
・5時間後、鳴き声がなく静かでおかしいと思ったら、全頭死んでいた。
「熱中症と酸欠が原因かも」という。「こんな運び方をしなければよかった」
・10月30日、遺体を捨てる。
・10月31日、発見されて全国ニュースへ。
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「ぼくが意図的に殺したのではないと証明したかったので撮りました」という写真を見る限り、
どの犬もぐっしょり濡れている。発汗のためではないかと想像できる。あるいは尿か。熱中症と酸欠が原因であることは十分考えられる。
<法的規制のない、過密移動の問題>
動物は移動のストレスに弱い。1匹ごとにケージに入れてエアコンを効かせて注意深く運ぶ車のなかでも、移動に慣れていない犬猫は、とてもおびえ、興奮し、鳴き続け、ときには酸欠状態になる。ハアハアとあえぐ。ケージには空気穴がたくさんついていたって、酸欠状態になる。
車の室温と、ケージのなかの温度は、すでに違う。だから、細心の注意を払って私たちも里親会や譲渡会に出かける。喘ぎが強いときは、ケージから出して車のなかにフリーにすることもある。運搬はほんとうに危険だ。箱のなかの状態がどうだったのか。すし詰めにされて最期を迎えた犬たちの無念と苦しみを思う。いや、ここに至るまで、皮膚病を放置され栄養も満足に与えられず、次々に子どもを産まされてきた苦しみを想えば、悪徳ブリーダーから解放されてやっと楽になったのだと言えなくもない。
<虐待の温床、繫殖施設の数値規制を今こそ!>
ブリーダー繁殖場でこの犬たちが置かれた環境がいかにひどいか、FLASH紙に掲載された写真をご覧になって頂きたい。日本の犬猫繁殖現場ではごくありふれた光景でもあるが、狭いケージ飼い。ケージのなかも相当汚れている。これでもましなほうだ。もっともっと悲惨な現場がある。
第四十四条 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
2 愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、百万円以下の罰金に処する。
3 愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する。
4 前三項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの
皮膚病、衰弱、飢餓。
頻繁な繫殖は「酷使」ともいえないだろうか。
劣悪な繫殖現場で動物が扱われているあり方は、まさに虐待にほかならない。
このような繁殖業者を野放しにしていいはずがない。虐待は、いまの法律で取り締まることができる。なかで働いている人は、どんどん内部告発をすべき。
警察に法律の知識とやる気があるかどうか。(あるいはその先の検察にやる気があるのか。)
行政職員に心があるかどうか。このあたりは自治体によって温度差があるが、心ある職員さんは少なくない。
実際、ひどい現場を行政に通報しても、
行政が通報を受けて指導に入る訪問日は、予め繁殖業者に伝えられるので、病気の犬猫は隠されてしまう。きれいなところだけ見せて終わり、である。だまされるふりをするのは楽。
でも、それでは解決にはならない!
また、行政や警察が介入する際に、違法かどうかの客観性が担保されていなくてはならないが、
そのためにも、飼養施設における広さやケージの高さ、過密度のmaxを示す数値基準を、早急に定めるべきである。これについてはずっと議論されてきた。が、これまでの法改正では見送られたままできており、改正から2年以上経過しても、国会議員による動物愛護議連や超党派議連で、検討委員会の設立さえ、なされていない。今こそ、数値規制を!
そして、そもそも、ペットショップでいのちある犬猫を売ること自体、虐待である。
本来なら生体販売そのものをなくすべきであるが、国が動物取扱業者の規制に積極的に踏み込まないのは、経済活動を守るためという。8週齢問題も、3年棚上げのまま。これについても、早急に議論再開を求めたい。
<繫殖によりあふれる犬猫!
売れ残った中犬猫・老犬猫を行政が引き取り拒否をするなら
その子らはどうなる?だったら死に物狂いで繁殖防止をすべき!>
2012年の法改正で、行政(保健所・動物愛護センター等)は、繁殖業者から不要になった繁殖犬猫の処分のための引き取りをしないでよくなった。
第三十五条
都道府県等(都道府県及び指定都市、地方自治法第二百五十二条十二第一項 の中核市(以下「中核市」という。)その他政令で定める市(特別区を含む。以下同じ。)をいう。以下同じ。)は、犬又は猫の引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない。ただし、犬猫等販売業者から引取りを求められた場合その他の第七条第四項の規定の趣旨に照らして引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として環境省令で定める場合には、その引取りを拒否することができる。
また、繫殖業者は、法改正とともに、終生飼養を義務づけられた。
(終生飼養の確保)
第二十二条の四
犬猫等販売業者は、やむを得ない場合を除き、販売の用に供することが困難となつた犬猫等についても、引き続き、当該犬猫等の終生飼養の確保を図らなければならない。
ブリーダー・繁殖業者は最期まで飼わねばならない。途中で飼えなくなっても、行政は引き取ってくれないよ、ということになった。
これで、犬猫に愛情があるなら問題ない。でも、愛情もなく、ただの商売の道具としか考えていない業者にとって、その「エサや医療費・ワクチンなど経費のかかる」命を、どうにかして処理してしまうことは、とても簡単。
今回の遺棄事件のように、廃業をする繁殖屋がお金を払って第三者に犬猫を預けるケースは
まだよいほう。
多くは飼育しきれずに困り果て、だれかに委託するどころか、山中に捨てたりひっそり殺したり
するケースが圧倒的に多い。
この事件を機に、これからは遺体を捨てにくくなるだろう。生きたままの遺棄も、世間の目があり、しにくくなるだろう。大量遺棄でなく、1匹ずつの目立たぬ遺棄が増えるだろう。飢えと寒さのなか、時間をかけて苦しみながら、犬猫たちは衰弱死や交通事故死を迎えるのだ。
遺体の遺棄は廃棄物処理法、生きている犬猫の遺棄は動物愛護法。これから逃れるためには、動物を商売にする業者は何だってやるだろう。
もっと残酷な形での処理が、悪徳ブリーダーらの抱える無辜の犬猫の将来を待ち受けている。
だから繫殖業者が勝手に繫殖犬猫を捨てたり殺したり処理できぬような体制を整えることが必要だ。飼育している犬猫にはマイクロチップを施し(ただ施しただけでは無意味であり、全国統一の管理体制を早急に整える必要がある)、1頭残らず所在の追跡を可能とするトレーサビリティーを確保することが必要である。自治体による「抜き打ちの」監視が伴うべきは言うまでもない。
そうでないと、繫殖現場の犬猫は苦しみのなかで生き、苦しみのなかで、処理される。
国・行政は、繫殖業者からの犬猫の引き取りをしないと決めたのなら、あふれる犬猫の数をおさえるために、生体販売規制に、いよいよ着手すべきである。
つまり、ペットショップに並ぶ犬猫をなくさねばならない。
そうでなければ、「引き取り拒否」は、ただの「怠慢」である。
そこらへんにある街頭の店で、簡単に犬猫を購入し、簡単に捨てることをゆるしている限り、
今回の栃木での犬死骸大量遺棄事件はなくならない。あの事件を支えているのは、命を売るペットショップの存在であり、動物で商売をする人々の経済活動を最優先することを許している日本の経済システムそのもの、それを守る動物ムラの存在である。(動物ムラは、繁殖業者と実態は同じだが、まことしやかな名前で知られ、権力とも密着し、審議会にもメンバーを送り込み、その実態を巧妙に隠しつつ、あたかも「動物のために」とのポーズをとっているために、じつにわかりにくいのだが、ここがある限り、法改正は妨害される。)
そして、栃木の事件はこれからも繰り返されるだろう。もっと巧妙に隠された形で。もっと残酷な形で。あの70匹の犬が哀れだと思う方は、あの事件を支えるこの国の流通システムに、
意義をとなえてほしい。年間の犬猫殺処分頭数は約13万頭。産ませなくてもいい。もうすでに、あふれているのだから。
<繁殖業者は、登録制から免許制へ!>
今は登録すれば第一種動物取扱業になれる。退職した老夫婦や子育て中の主婦が、気楽に小遣い稼ぎで繁殖させて市場に出している。
(第一種動物取扱業の登録)
第十条 動物(哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものに限り、畜産農業に係るもの及び試験研究用又は生物学的製剤の製造の用その他政令で定める用途に供するために飼養し、又は保管しているものを除く。以下この節から第四節までにおいて同じ。)の取扱業(動物の販売(その取次ぎ又は代理を含む。次項、第十二条第一項第六号及び第二十一条の四において同じ。)、保管、貸出し、訓練、展示(動物との触れ合いの機会の提供を含む。次項及び第二十四条の二において同じ。)その他政令で定める取扱いを業として行うことをいう。以下この節及び第四十六条第一号において「第一種動物取扱業」という。)を営もうとする者は、当該業を営もうとする事業所の所在地を管轄する都道府県知事(地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項 の指定都市(以下「指定都市」という。)にあつては、その長とする。以下この節から第五節まで(第二十五条第四項を除く。)において同じ。)の登録を受けなければならない。
2 前項の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書に環境省令で定める書類を添えて、これを都道府県知事に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては代表者の氏名
二 事業所の名称及び所在地
三 事業所ごとに置かれる動物取扱責任者(第二十二条第一項に規定する者をいう。)の氏名
四 その営もうとする第一種動物取扱業の種別(販売、保管、貸出し、訓練、展示又は前項の政令で定める取扱いの別をいう。以下この号において同じ。)並びにその種別に応じた業務の内容及び実施の方法
五 主として取り扱う動物の種類及び数
六 動物の飼養又は保管のための施設(以下この節及び次節において「飼養施設」という。)を設置しているときは、次に掲げる事項
イ 飼養施設の所在地
ロ 飼養施設の構造及び規模
ハ 飼養施設の管理の方法
七 その他環境省令で定める事項
3 第一項の登録の申請をする者は、犬猫等販売業(犬猫等(犬又は猫その他環境省令で定める動物をいう。以下同じ。)の販売を業として行うことをいう。以下同じ。)を営もうとする場合には、前項各号に掲げる事項のほか、同項の申請書に次に掲げる事項を併せて記載しなければならない。
一 販売の用に供する犬猫等の繁殖を行うかどうかの別
二 販売の用に供する幼齢の犬猫等(繁殖を併せて行う場合にあつては、幼齢の犬猫等及び繁殖の用に供し、又は供する目的で飼養する犬猫等。第十二条第一項において同じ。)の健康及び安全を保持するための体制の整備、販売の用に供することが困難となつた犬猫等の取扱いその他環境省令で定める事項に関する計画(以下「犬猫等健康安全計画」という。)
このような登録だけでは不十分だ。
ペットショップをなくしていきたい。犬がほしい人は優良なブリーダーのもとへ直接訪問して指導を受け、社会化のための期間を経てから、受け入れる側も準備を入念にして犬を迎え入れる、そうした時代になればよい。
そのためにも、繁殖業者・ブリーダーは、きちんとした許可制、免許制にすべきである。
これだけのおおがかりな恥ずべき繫殖犬遺棄事件が起こったのであるから、
登録制から免許制への移行に、国民の後押しの声が集まるはずである。
だれでも繁殖できる時代から、きちんとした知識と愛情と技術をもつ、特定の人だけが
適正な頭数と頻度で産ませ、きちんと終生まで飼養させる時代へ。
それができるのは、いつ?
今でなくて、いつだろう。
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