2015年2月20日
「京都市動物による迷惑の防止に関する条例(仮称)の制定に関する
本市の考え方」に関する意見書
京都市長 門川大作 殿
京都市議会議長 中村三之助 殿
全国動物ネットワーク
第1 意見の趣旨
「京都市動物による迷惑の防止に関する条例(仮称)」は、意見募集の手続に重大な瑕疵があり、且つ内容も違法であるから、廃案とすべきです。
第2 意見の理由
1 貴市では、「京都市動物による迷惑の防止に関する条例(仮称)」の制定を予定しているということであり、同条例案に対するパブリックコメントを募集されていたので、当ネットワークとしましても、2015年1月5日付、及び2月13日付で意見書をお送りしたところです。
同意見書の冒頭にも書きましたように、同意見書を書くにあたって参照したものは、同条例の条文案ではありません。参照したものは、「京都市動物による迷惑の防止に関する条例(仮称)の骨子」というPDFファイルでした。このようなものしか参照することができなかったのは、貴市が条文案を公表していなかったからです。
貴市では、上記条例案に対して多数の反対のパブリックコメントが寄せられたことに関し、「京都市動物による迷惑の防止に関する条例(仮称)の制定に関する本市の考え方」という文書を発表されました。
その文書に書かれていることは、当ネットワークの意見書の内容とも関連しますので、以下の通り、抗議をすると同時に、質問をいたします。
2 上記「本市の考え方」という文書を発表したことを告知する貴市のホームページには、「本市の条例が、「給餌者に猫を自ら飼養することを課す」もの、あるいは「まちねこ活動支援事業」に反する給餌が禁じられ、罰則が課される」ものといった誤った情報が一部の団体等により広められておりますことから、御意見の中には、このような誤解に基づいて、反対されるものも多数ございました」と述べられており、この誤解を解くために、上記「本市の考え方」という文書が発表された、と書かれています。
しかし、貴市が誤解であると述べられている上記の点は、貴市がホームページ上に掲載していた「条例(仮称)の骨子」というPDFファイル3pの「市民の皆様にお願いすること」という欄に明確に書かれていることです。条例の骨子と謳われたファイルに明確に書かれている以上、それが条例の内容となっているものと考えるのが当然のことです。当ネットワークも、あるいは、上記条例案に反対の意見を表明した他の団体も、誤解などしておらず、貴市が発表した条例案の内容に対して誠実に意見を述べたものに過ぎません。寧ろ、「本市の考え方」に記載されたことは、貴市において、予想に反して反対意見が圧倒的多数であったことから、条文案を急遽改訂した上、遅出しで出したというような疑いすら生じさせるものであると言わざるを得ません。
3 以上のように、当ネットワークを含めて、貴市が発表した条例案の骨子を踏まえて誠実に提出された多くの個人・団体のパブリックコメントに対して、誤解であるなどという、それこそ誤った見解を発表する貴市の態度は、条例案に反対する意見を不当な意見であるというイメージを公に広めるものにほかなりません。
4 また、「本市の考え方」を拝見しても、「所有者等のない動物に対して給餌を行うときは、適切な方法で行うこと」という条文が著しく明確さを欠くことに変わりはありません。しかも、このような明確さを欠く「適切な方法で」はない方法で、所有者のいない動物に給餌を行ったことに対して、勧告、命令という手順を踏むことによったとしても、罰則を以て臨むことには罪刑法定主義の観点から大きな問題があり、野良猫に対する餌やりを行っているボランティア団体や個人に対して著しい萎縮効果を生むことも疑いのないところです。
5 さらに、「本市の考え方」によると、「野良猫に対する無責任な餌やり…には、野良猫による人の生命、身体、財産等の侵害や、ふん尿等による周辺環境の悪化の問題があり」などと書かれていますが、野良猫による人の生命、身体、財産等とは具体的にどのようなことを言っているのか、不明です。野良猫に対する餌やりと、それらの侵害、あるいはふん尿等による周辺環境の悪化との間に因果関係があるのかどうかも不明です。
6 従って、このような、制定の手続においても、その内容においても大きな問題点を抱える条例案は、廃案とされるべきです。
第3 求釈明
本条例案の制定過程や内容については、上記のように不明朗、不明確な点が多々ありますので、以下の通り、ご質問いたしますので、速やかにご回答されたく、お願いいたします。
1.本条例案のパブリックコメントを募集するに当たり、条例案を公表しなかったのは何故ですか?
2.貴市がパブリックコメントを募集するにあたって公表していた「骨子」に書かれていたことを踏まえて述べられた意見が、どうして「誤解である」ということになるのですか?
3.もしそれが誤解であるとするなら、条文案の中に含まれていない事項を「骨子」に書き込んだのは何故ですか?
4.貴市のホームページで「誤った情報が一部の団体等により広められております」とありますが、その「一部の団体」とは、どの団体のことなのか、具体的名称をお知らせください。また、その団体のホームページ等の記事のどの点が誤っているのか、具体的にお知らせください。もし知らせていただけない場合は、知らせていただけない理由を明らかにしてください。
5.条文案の中にある「適切な方法による」給餌ではない給餌というのは、どのような給餌が該当するのですか?
6.「適切な方法」でない給餌が行われたときに、「必要な措置を採ることを勧告する」ということが予定されていますが、勧告される「必要な措置」にはどのような措置が考えられているのですか?給餌者が当該動物を引き取ることが主に予定されているのではありませんか?
7.条文案を作られたのはいつですか?
8.この条文案を作成したのは誰ですか?
9.「本市の考え方」を作成したのは誰ですか?
10.3005通集まったとされる意見結果(パブリックコメント結果)を整理して公表しましたか?
11.3005通集まったとされる民意をどのように受け止め、議会に提出した条例案に反映させましたか?
12.市議会には、集まった意見をどのようにまとめて提出しましたか?
13.この条例案が罪刑法定主義に違反するという意見についてはどのようにお考えですか?
14.この条例案が動物愛護法2条1項、44条2項に違反する違法な条例であるという意見についてはどのようにお考えですか?
以上の点について、本書面到達後、1週間以内にご回答いただけますよう、お願いいたします。
以上の段、遺漏のなきようお願いいたします。
******************************