「鬼怒川水害により被災された常総市民のための避難所・公営住宅に、ペット同居可能な建物をご準備ください」
インターネットで呼び掛けて、約一カ月半かけて集めた署名一万四千六百三十八筆を携え、今月十三日、つくば市内の国家公務員宿舎を管理する関東財務局筑波出張所に出向いた。
県と常総市は、関東・東北水害の被災者に公営住宅を無償で提供しているが、ペットは一緒に住めない。だが戸建て住宅の旧国家公務員宿舎「並木3丁目住宅」では、東京電力福島第一原発事故で福島県から避難してきた人が暮らし、特例でペットも飼っている。
常総の被災者にも提供してほしいと直訴すると、筑波出張所は「準備できる」と、あっさり承諾した。ペットがいるため、公的支援を受けられずにいた被災者にも、住宅を確保する道を開いた。
「ペットを飼っている人が困っているのは、避難所に行けば分かること。情報収集をしないのは行政の怠慢」と手厳しい。「市民が目を光らせて声を上げなければ」
県南地域を中心に、会員三百人近くを擁するNPO法人「動物愛護を考える茨城県民ネットワーク(CAPIN)」の代表を務める。今回、被災者に支援物資のペットフードを配ったり、ペットを一時預かったりしている。
活動の原点は、東京外国語大三年のときに留学して、一年半滞在したイタリアでの体験。「犬猫の殺処分件数はゼロ。ローマ市は条例に基づき、市民が野良猫を見つけて通報すると、避妊・去勢手術をして群れに戻している」と解説する。
四十歳のころ、弁護士の夫と長男が拾ってきた生後三、四カ月の子猫を育てた。「猫は寄り添ってくれるし繊細」と、とりこになった。「殺処分されてしまう不幸な命を救い、イタリア式を当たり前にしたい」と愛護活動に足を踏み入れた。
夫らとCAPINを設立し、現在は土浦、常総両市のシェルターで犬二十~三十匹、猫三十~四十匹を預かり、引き取り手を探している。週二日、東京都の武蔵野音楽大でイタリア文学とイタリア語の講師を務めながら、会員らと交代で毎日朝と晩、犬を散歩させ、犬猫に餌を与えている。百五十以上の動物愛護団体が加盟する全国組織「全国動物ネットワーク」代表として、国会議員も交え、動物愛護法の勉強会を開いてきた。
野良だった犬は、人を見ると怖がって震えたり、散歩中に座り込んだり。でも「三カ月ぐらいたつと落ち着いてくる」という。「自分の時間とお金と人脈は、すべて動物たちのため。(身体が動く)八十歳くらいまで犬猫のボランティアをしていたい」 (増井のぞみ)
<つるた・まこみ> 1964年12月、神戸市生まれ。東京外国語大3年の時、イタリア北部・ベネチアに1年半留学する。2005年に家族が子猫を拾ってきたことをきっかけに動物愛護活動へ。08年に任意団体「動物愛護を考える茨城県民ネットワーク(CAPIN)」設立、11年にNPO法人化。つくば市で夫、大学3年の長男、約40匹の猫たちと暮らす。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201511/CK2015112902000139.html
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