2016年6月11日
環境大臣 丸川 珠代 殿
環境省 自然環境局長 奥主 喜美 殿
環境省 自然環境局総務課 動物愛護管理室 則久 雅司 殿
熊本県動物愛護行政緊急支援のお願い
(熊本県動物管理センター、熊本県下の保健所、幼齢犬猫を収容する行政施設を対象に、給餌や暖めなど、動愛法にもとづく適正な取扱がなされているかの実態調査とご視察、ご支援のお願い)
前略、東日本大震災の折に全国規模で動物救済の連携のために組織された「全国動物ネットワーク」と申します。我が国の動物愛護にご尽力たまわり、心より感謝申し上げます。
熊本での大地震に伴い、熊本県動物管理センター(熊本市東区戸島町2591)に犬猫の引き出しのために入る機会がございました。ここでは多くの犬猫が収容され、飼い主との再会や新たな譲渡を待っているところでございますが、私が入った6月1日には、センターには子猫の食べられる缶詰やパウチのフード、ほ乳瓶などがなく、ミルクに至っては「ヤギミルク」しかないような状態でした。冷たく息絶えている子猫もおりました。なぜか頭から尻尾まで濡れそぼり、折り重なっていた子猫3匹もおり、このうち2頭は暖めの甲斐もなく、その日のうちに亡くなりました。
センターの動物を世話する職員さんは若いお二人の女性だけで、多数の犬の世話で手一杯であり、わずかな出入りボランティアさんも犬散歩がメインで、子猫の世話にまで手が回らない状況でした。人手もなく、前日まで生きていた猫たちが翌朝には小さな体を寄せ合うようにして息絶えている有様でございました。
県内の各保健所を経由してセンターにやってきた子猫たちは、すでにやせ細って風邪を引いており、目も目やにで塞がり明かない状態です。保健所やセンターでどれだけの期間過ごしたかはわかりませんが、その間、子猫たちが授乳や暖めをされていたとは考えられません。(御船保健所では、ミルクやほ乳瓶がないと聞きました。そして、殺処分ゼロを達成した一部保健所や施設を除き、全国の保健所、センターで、幼齢犬猫はおおむね譲渡対象からはずされて、処分対象となっております。)
弱り切った子猫たちは、5月31日(火)の午後に、トリマーさんの指示で、全頭、水道水で洗われていることが、獣医師への確認で明らかになっております。ドライヤーもあてられず、タオルで拭かれた子もいたようですが、前述の子猫のように拭かずにただ置かれたものもおりました。子猫を濡らすことは、弱らせることです。ましてや、衰弱しきった子猫です。
県の職員の皆さまも、被災動物なのでいったんは処分をしないとの決定のもとで、マンパワーと物資のない中、心を痛めておいでです。4月14日の発災からすでに1か月半が経過しておりましたが、6月1日にはセンターには子猫を生かすための物資とマンパワーがまったくありませんでした。(熊本県は、物資募集は早期に辞退していました。)
お湯も出ない施設で、眼薬もなく、ミルクもなく、子猫の死体が転がり、不適切に水で洗われ乾かされもせず、犬猫がいっしょに置かれ、表現は悪いかと存じますが、結果として悪徳ブリーダーの施設と変わらない扱いでした。
つきましては、熊本県動物管理センターへの調査と適切なご指導、応援をお願いいたしたく、なにとぞよろしくお願い申し上げます。現在、私どもをはじめ、全国有志団体、個人が熊本県収容の犬猫を引き取り、里親を探すために空輸まで行い尽力しております。そのような中、まずは熊本県の施設で救命していただくことが肝要と存じます。
末尾に引用した<参考>文書には、「幼齢にもかかわらず、食餌を適切な回数与えない(例えば朝晩の2回のみ等)、病気や怪我をしているにもかかわらず獣医師にみせない、
温度湿度の調整をしない」、これはネグレクトとされています。また、やらなくてよいことをするのは積極的虐待とされています。センターでの子猫の水荒いはこれに該当しませんでしょうか。災害時という緊急事態ではあります、貴省のご指導とご支援があれば十分に改善できる状況でございます。収容状態の改善のためのマンパワーや物資の確保の方法については獣医師会への支援要請や動物看護士やトリマーなどの協会への人材派遣要請など、先の東日本大震災で行われた支援方法も有効だと思います。
県のほうからは申し出にくい事情もあろうかと存じます。なにとぞよろしくお願い申し上げます。
また、公示の頭数と、実際に収容されている頭数と合いません。公示には子猫は掲載されておらず、成猫はわずか迷子猫1匹、譲渡猫6匹の計7匹だけの公示です。
しかしながら子猫と成猫を合わせて50匹が収容されていることが出入りのボランティアさんにより報告されています。
被災された飼い主さんの多くが、いなくなった猫を探しておられます。このセンターに収容されていることを知らず、そのままほかに譲渡されてしまったり、処分になると、所有権の侵害となります。飼い主さんにセンター収容犬猫を戻す努力をすべきです。この点についてもご指導をお願い申し上げます。
また、熊本県動物管理センターの動物取扱・処分業をになう委託業「弘済会」は、動物取扱業として登録をされているのかという疑問もございました。
ご多忙中、数々お願い申し上げ恐縮でございますが、なにとぞ至急の現地支援と収容動物の状態改善をお願い申し上げます。
全国動物ネットワーク一同
代表 鶴田 真子美
副代表 中村 光子
同 溝上 奈緒子
運営委員 川井 登志子
同 鈴木 敬子
同 大富 直樹
同 宮本 充
同 藤村 晃子
同 イザベラガラオン青木
顧問 弁護士 箱山 由実子
同 弁護士 松村 孝
同 弁護士 ピオ・デミリア
監事 みやざき市民オンブズマン 野中 公彦
草々
<参考>
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飼育改善指導が必要な例(虐待に該当する可能性、あるいは放置すれば虐待に該当する可能性があると考えられる例)について
環自総発第 100205002 号
平成2 2 年2 月5 日
環境省自然環境局総務課長から各都道府県・指定都市
・中核市動物愛護主管部(局) 長あて
動物愛護管理行政の推進については、平素より格段の御協力をいただき、厚
く御礼申し上げます。さて、虐待の定義の明確化については、担当者会議等において貴県市より御意見をいただいているところです。虐待に該当するかどうかについては、行為の目的、手段、苦痛の程度等を総合し、社会通念により判断してきているところですが、より具体的にしていくためには判決事例を収集、把握していくことが重要であると考えています。そのため、平成 19
年度に判決事例を「動物の遺棄・虐待事例等調査業務報告書」として取りまとめました。今般、この報告書をもとに、飼育改善指導が必要であり虐待に該当する可能性、あるいはそのままの状態で放置されれば虐待に該当する可能性があると考えられる事例を別紙のようにまとめましたので、業務の参考にしていただくようお願いいたします。
なお、より詳細な説明を環境省ホームページにも掲載していますので、御参
照ください(http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h1903.html)。
虐待の判決事例については、今後も継続して収集していくこととしており、これを踏まえ、別紙の事例につきましても逐次見直していきたいと考えております。
また、以下の点にも御留意ください。
○ 本通知は、可能な範囲で具体的な事例を示したものであり、個々の案件に係る判断は、動物及び動物の所有者又は占有者の置かれている状況等を考慮して個別に行われるべきものと考えます。
○ 別紙の事例については、後日、増刷し、各自治体あて発送予定の「動物の遺棄・虐待事例等調査業務報告書」(平成 19 年度)とともに警察にも情報提供していただき、引き続き連携して対応していただきますようお願いいたします。
( 別紙)
Ⅰ 動物の虐待の考え方
(表を略す)
Ⅱ 飼育改善指導が必要な例(虐待に該当する可能性、あるいは放置すれば
虐待に該当する可能性があると考えられる例)について
1 .一般家庭
・餌が十分でなく栄養不良で骨が浮き上がって見えるほど痩せている(病気の場合は獣医師の治療を
受けているか。高齢の場合はそれなりの世話が出来ているか。)。
・餌を数日入れ替えず、餌が腐っていたり、固まっていたりして、食べることができる状態ではない。
・器が汚く、水入れには藻がついている。あるいは、水入れがなく、いつでも新鮮な水を飲むことができない(獣医療上制限されているときを除く)。
・長毛種の犬猫が手入れをされず、生活に支障が出るほど毛玉に覆われている。
・爪が異常に伸びたまま放置されている。
・(繋ぎっぱなしで散歩にも連れて行かず、)犬の糞が犬の周りに何日分もたまり、糞尿の悪臭がする。
・外飼いで鎖につながれるなど行動が制限され、かつ寒暑風雨雪等の厳しい天候から身を守る場所が確保できない様な状況で飼育されている。
・狭いケージに閉じ込めっぱなしである。
・飼育環境が不衛生。常時、糞尿、抜けた毛、食餌、缶詰の空やゴミがまわりにちらかっており、アンモニア臭などの悪臭がする。
・病気や怪我をしているにもかかわらず、獣医師の治療を受けさせていない。
・リードが短すぎて、身体を横たえることができない。
・首輪がきつすぎてノドが締めつけられている。
・しつけ、訓練と称するなどし、動物に対し殴る、蹴る等の暴力を与えたり、故意に動物に怪我をさせたりする。
・事故等ではなく、人為的に与えられたと思われる傷が絶えない。
2 .動物取扱業者等
・ケージが狭く、動物の排泄物と食餌が混在した状態で放置されている。動物が排泄物の上に寝ている。
・常時水を置いていない。あるいは、水入れはあるが中に藻が付いていたりして不潔である。
・幼齢にもかかわらず、食餌を適切な回数与えず(例えば朝晩の2回のみ等)、また、それで問題ないと説明している。
・糞尿が堆積していたり、食餌の残渣が散らかっていたりして、清掃が行き届かず、建物内、ケージから悪臭がする。
・動物の体が著しく汚れている。
・病気や怪我をしているにもかかわらず、獣医師の治療を受けさせていない。
・飼育環境が飼育している動物に適していない(温度・湿度の調整も含む)。例えば、西日が当たるなど建物内の温度が上昇した場合、あるいは、その逆で、冬季に低温となった場合に対応しない。
・多頭飼育で、飼育環境が不衛生。常時、糞尿、抜けた毛、食餌、缶詰の空やゴミがまわりにちらかっており、悪臭がする。
・ケージ内で動物を過密に飼育している。
・店内の大音量の音楽、または過度の照明にさらされることにより動物が休息できない。
・しつけ、訓練と称するなどし、動物に対し殴る、蹴る等の暴力を与えたり、故意に動物に怪我をさせたりする。
・体調不良、不健康な動物をふれあいや散歩体験等に使用する。
・出産後、十分な期間(離乳し母体が回復するまでの間)を経ずに、また繁殖させる。https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/files/n_07.pdf