東京弁護士会「動物愛護法入門」出版「殺処分なくしたい」「法改正議論のきっかけに」

書籍の編集を担当した東京弁護士会の公害環境委員会・動物部会の弁護士たち

「殺処分をなくしたい」「ペットと人間が共生できる社会になってほしい」。そんな思いから発足した東京弁護士会の公害環境委員会・動物部会が7月中旬、「動物愛護法入門ー人と動物の共生する社会の実現へー」(民事法研究会)を出版した。

「動物愛護法入門」では、行政やペット業者、飼い主、獣医師など、動物を取り巻く関係者が果たすべき役割を、動物愛護法に基づいてわかりやすく解説している。法律解説にとどまらず、ペット業界を取り巻く現状や、今後の課題をコラム形式でちりばめるなど、法律関係者以外でも手に取りやすい構成になっている。

課題として取り上げられているテーマはのひとつは、犬や猫などのペットに「マイクロチップ(個体識別情報)」の装着を義務付けるべきかという問題だ(現在は一部の動物を除いて努力義務)。「動物の体内に注入する際の安全性は?」「装着させる義務を負うのは販売業者か、それとも飼い主か?」「個体識別情報を読み取る機器の精度は?」など問題を多角的に検討する。

東京弁護士会は84日、出版を記念して、東京・霞が関の弁護士会館で意見交流会を開催。同部会の島昭宏弁護士は「そもそも、動物愛護法をわかりやすく解説する書籍がなかったので、一般の人でもわかりやすい書籍を作りたかった」と出版の意図を語った。

その上で、「単に条文解説をするだけでなく、『殺処分をなくす』『動物虐待をなくす』といった大きな目的を実現するために、次の(動物愛護法)改正に向けてどんな議論が必要なのか、課題があるのかといった点も示したかった。この本が、議論するひとつのきっかけになってほしい」と期待を込めた。

86日、新評論から新刊が出ました。
「動物・人間・暴虐史」David A.NIBERT著、新評論、3800円、訳者は井上太一さんです。

衝撃的な歴史解釈
歴史家の多くが無視してきた
暴力の伝統とその負の遺産。
人類発展史の暗部をえぐり出す警世の書。
(
帯より)

著者は、ウイテンバーグ大学社会学教授、デヴィッド・ナイバート。

「人類史は暴力拡大の歴史」との解釈に基づいて、古代、中世、大航海時代、近世、現代に至るまでの世界史が、動物の搾取のみならず、人間への暴力という視点で、改めて捉え直されています。

人間がどこで道を踏み誤ったか。それは、貨幣経済の始まりでもなく、農業の誕生でもなく、動物利用の営為であった、と。健全な文明発展を妨げてきたのは、動物への体系的な搾取だった、と。

筆者の膨大な資料の裏付けにより、人間とは、なんて残虐な生き物であるのかを痛感します。

動物ばかりでなく、人に対してです。

原住民から土地を奪い、牛や豚を放つ。その牛や豚が、先住民のトウモロコシ畑を荒らす。反撃に出た先住民は入植者により残忍な仕方で皆殺しにされる。

こうして奪った土地で、広範な牧場経営を行う入植者は、先住民の生活や文化を壊し、命をも奪い、経済的にも配下に敷いていく。

牧場経営が暴力の装置であり、動物だけでなく人間を貶めていった。

ニュージーランド、アメリカ、アイルランド、ユーラシア、と、グローバルな視点で、そこで起こった動物と人への搾取が、史実に基づき明確に捉え直されています。

牧場といえば、青空の下、緑の草原がどこまでも広がり、牛や羊がのんびりと草を食む、風薫るブーコリカの世界である、との認識がありますが、そうしたイメージを覆す、牧場経営の実体です。そして、今の工場畜産では、牛も豚も、壁のなか。私たちは接触もできません。畜産動物は身動きとれない檻に入れられ、自由に草地を歩くことも許されないでいます。

動物への体系的な暴力は、先住民や遅れた入植者、社会的弱者に対しての差別や構造的搾取に繋がっています。飛躍してしまいますが、本書を読めば、イギリスにとってのアイルランドや、スペインにとってのパタゴニアがまさにそれであることがわかります。

動物搾取は、人間の搾取、人間に対する暴力に繋がっていきます。

アメリカ大陸、アフリカ、オセアニアその他の地域に暮らす先住民らは、いまだ物質的欠乏に悩んでいます。

かつては彼らが耕し、自給のために野菜を植えていた土地が、突然略奪され、資本家や入植者がもたらした牛豚の放牧に使われ、やがては牧場経営に取り込まれていきます。

女も子どもも年寄りも命を奪われ、生き残った先住民には、自分や共同体のために食べ物を作る土地を持ちません。

メディアを使って、世界的にファーストフードやハンバーガー文化が広まる。慢性疾患の流行。

毎年、550億を超す牛、鶏、豚のとさつ。環境破壊。何百万年にもわたり、自由に生きてきた野生動物が、たかだか1年のうちに、人間に隷従し、絶滅しようとしています。

人類は、どうやって、これを乗り越えていけばよいのでしょうか。

絶望の書、ともいうべき内容ではあるのですが、未来を拓くために私たちがとるべき道も、ちゃんと、さいごに示されています。

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全国動物ネットワーク事務局

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