市営住宅における動物愛護施策
10月7日には、都市計画局の決算審議が行われ私も質疑を行いました。住宅施策を所管している都市計画局に対し、以前から問題意識を持っていた市営住宅における動物愛護施策の課題(市営住宅内においての動物飼育)について問題提起を行いました。
昨年、京都市では府と協働して動物愛護センターを整備しましたが、同時に
、人と動物の共生に向けた取組みを推進するためのマナー条例も制定されました。これまで市営住宅では基本的に動物飼育は禁止事項として入居前の留意事項として入居者に徹底しています。実際には飼育されている状態が多くあり、動物を飼いたい入居者と、飼育はすべきでないとする入居者との間では様々なトラブルも起こっています。しかし、その実態は必ずしも管理上把握されているという状況にはなっていません。
こうした中で、動物愛護行政を取り巻く状況も時代とともに大きく変化していることや、何よりも京都市で動物飼育に関して、マナー条例が制定されたことを契機に、京都市が管理している市営住宅における犬猫等の動物飼育の課題についても何らかの対応が迫られてきているのではないかという問題意識を持っています。
現在、多くの都市で市営住宅条例を制定し管理運営をされていますが、その条文の中には、おそらくどの自治体の条例でも、動物・飼育・ペットという文言は一切規定されていないものと思われます。しかし実際には、入居者に対し動物飼育を拒否しているのが実情ではないかと思います。何を根拠に動物を禁止しているかといえば、市営住宅の応募のしおり等において、応募の基準・入居の基準という注意事項等の記載の中で、禁止しているに過ぎません。
こうした状況の中で、実際に入居者が動物を飼育している実態については、厳密にいえば条例違反とはいえないものと考えます。敢えていえば、動物を所有し飼育しているだけでは、条例違反でも規約規則違反でもないことになります。条例では、動物を飼育している住民及び所有する動物が、他の住民等に対し迷惑行為を行った場合に、禁止事項に抵触することになるものと推察されます。著しい迷惑行為の場合には、裁判はもとより住居の明渡条項で退去命令を出さざるを得ないことになります。いずれにしても市営住宅における動物飼育の対応について、多くの自治体の住宅管理の担当者が頭を抱えている実情ではないでしょうか。
こうしたことから少なくともマナー条例を制定した京都市においては、今後公営住宅における動物愛護施策の推進についてどのように対応するかについて本格的な議論と合意形成を図り推進すべき時に来ているように考えます。むしろ先駆的な役割が求められているように思います。
その意味からも、まずは「現在の住宅管理として実態がどのようになっているのか現状把握をすることから初めてもらいたい」と訴え、理事者からも「今までも対応を十分に検証しあるべき姿を検討したい」との答弁があったことは大きな前進です。
動物飼育の禁止を無視して動物を飼育している入居者を排除し退去させることが本意では当然ありません。また、動物愛着(動物愛護ではなく極めて極度な愛着心に依存する考えや行動)を批判しているのでもありません。どこまでも、動物愛護憲章の理念をいかに市民に浸透させ、真に人と動物との共生のために、真剣に考えなければならないということです。結論を出すまでには相当な時間も費やすことも当然です。合意形成を図り模範の地域コミュニティを創出していくために努力を期待したい。
(以上、大道先生のブログより転載)
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飼うことの禁止を禁ずるイタリア新法(THEペット法塾冊子への寄稿)
全国動物ネットワーク代表・NPO法人CAPIN代表 鶴田真子美
イタリアの全家庭の55,3%が家庭動物を飼育している。その内訳は「Eurispes 2013」によれば、犬55,6%、猫49,7%、魚9,7%、鳥9%、カメ7,9%、うさぎ5,3%、ハムスター4,6%、爬虫類1,1%とされる。
持ち家でなく、マンションやコンドミニアムで飼育する家庭も当然多い。そうした集合住宅で動物飼育に関連して生じる問題には、糞尿 (30%)、騒音 (27%)、におい(20%)が挙げられる。
2013年6月18日、ついにイタリアで集合住宅の動物飼育に関して新たな法律が施行された。その新法では、動物を飼う自由はいっさい制限できなくなったのである。集合住宅では、公共のエリアに連れていくこともできる。ただし、飼い主がきちんとしつけをほどこして、動物が行儀よく振る舞えること、他人様の動産・不動産を破壊しないことが前提条件となる。
また、集合住宅の敷地に住み着いた野良猫たちを(医療行為を行う目的以外に)つかまえたり遠ざけたり、どこかに移動させることも違法であることが明らかにされた。(しばらく前には、最高裁が「コンドミニアムに住む猫たちを追い出すことは、群れて住む猫の習性に反する」とし、猫を追い出すことを禁止した判決を下している。)これは、イタリアの国家をあげての野良猫不妊手術・地域猫活動の推進を背景にしているといえる。
愛護動物繁殖防止法を受けて各自治体が定める条例には、たとえば「3匹以上の猫を市民がみつけたら、そこは野良猫のコロニーがあると理解し、市役所に連絡して捕獲器を借り出し、つかまえて保健所で無料で避妊去勢手術を受けさせ、数日後に迎えに行って、つかまえた場所にもどしなさい」といった指示がある。野良猫の避妊手術はイタリアでは行政が行うので、原則無料である。これが、今回の新法の「野良猫追い出し禁止」の法的根拠となっているのだろう。
また、これまで法律が用いていた言葉は「伴侶動物」であったが、「家庭動物」 “animali domestici”の用語が用いられるようになったことも、意識の変化の表れだろう。つまり、2013年にしてようやく、犬猫ウサギは、もはやただの「物」ではなく「感覚をもつ生き物」と捉えられるようになったのだ。(ただし、エキゾチックアニマルは「家庭動物」とはみなされない。)こうして、集合住宅で動物と暮らす自由があらゆる人に保障されるようになった。
今回、集合住宅で住人が動物を飼うことを拒めなくなったが、もしも飼い犬猫がほかの住民の身体や財産に危害や損害を加えれば、刑法635条、639条に定められた通り、それを賠償する責任が生じるし、汚物で汚したら洗浄しなければならないことに変わりはない。飼い主も十分わきまえるべし、飼い犬も十分しつけを受けるべし。ただ、イタリアは新しい法律で「犬や猫は家族の一員。いっしょに暮らすのを禁止するのは、人間と動物の権利を侵害するものである」と規定した。21世紀のイタリアが下した結論だ。
京都市会議員 大道よしとも先生ブログ:ゆびきり政治
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