保健所やセンターが、犬猫を集めて殺す、法的根拠がありますか?

皆様、日々の活動、ほんとうにお疲れ様でございます。現場でのレスキューや保護譲渡活動でご苦労されておられる皆様、動かない行政や警察を相手に、いかにご苦労されておられることでしょうか。ご自身が保護に動かねば死んでしまう犬猫たちを前に、とにかく動くしかない苦しさのなかで、保護活動が長くなればなるほど(譲渡できない病気の生体を抱えることとなり)動物も増えていき、資金も体力も尽き果て、崩壊する団体さんも出てきています。10年後の我が身を重ね、その前に何とか少しでも仕組みを改善させて、私たち民間ボランティアが明るい気持ちで活動できるようにとそれだけ願って活動しております。

このところ、様々な虐待遺棄相談が事務局に入って参りますので、その対応に追われております。猫バラバラ遺体事件(表に出ないことが多いです)、河川への子猫投げ捨て遺棄事件、ネグレクト相談、収監あるいは入院された飼い主の遺した犬の飼養・譲渡、といった民間人による虐待や遺棄がやはり多いのですが、行政による施設内虐待、そして職権濫用とも言える、安易な殺処分に関する相談事例もございます。

 

たとえば茨城県について、ご報告させて頂きますと、27年度の犬猫の殺処分数は3969匹です。平均すると、月ごとに約300匹が殺されていることとなります。

 

ところが、公示される成犬と負傷猫は、週に20匹前後です。つまり月に80100匹、年に1200匹が公示されることとなるでしょう。

 

毎月、公示されるのは100匹、処分されているのは300匹、

その差の200匹の犬猫が、公示されずに殺されているということになります。

捕獲された犬の公示は、狂犬病予防法に規定されており、飼い主捜しのために自治体に掲示を義務づけたもので、たった2日の期限とされます。(茨城の場合は延長されて1週間となっておりますが、たった1週間で、県内ただ1箇所に全頭を集めた山奥の指導センターに、飼い主さんが犬を探しに来たり、あるいはネットで検索して連絡をとったりして、家に戻ることは実際には難しく、少数です。)でもこの「公示」が、飼い主が自主的に飼養をあきらめた「放棄犬」は掲載されない根拠となっています。野良が産んだ子犬や子猫らしき幼齢の動物も、飼い主が元々いないとの前提で、公示されません。

 

殺される犬猫は、公示情報に掲載された数の、約3倍はいるのです。

譲渡の機会を少しでも増やすためには、これらの、水面下で処分され、存在することさえ知ってもらえない犬猫を、国民・県民に広く知らせることが大切ではないでしょうか。

 

飼い主がいないから公示をしない、と。すぐに処分、と。

あるいは、担当者の裁量によって適性があると運良く判断された、若くて健康そうで見た目がチャーミングな犬猫のみに、譲渡登録団体に紹介される可能性が出てくるにすぎず、これでは譲渡の機会も狭められてしまいます。

 

目に見えないところで処分されている犬猫が公示の3倍は存在するということを、ふつうの方には知って頂くチャンスがありません。子犬や子猫の命を奪うこと、そして飼い犬だった犬(狂犬病ワクチンを接種されている犬もいるでしょう)を殺してしまうこと、これには、何の法的根拠もないのです。これは、行政の職権濫用であり、行政による「虐待」そのもの、と言えるのではないでしょうか。

 

 センターに収容されている犬をご覧になってください。多くが首輪をつけた賢くて穏やかな飼い犬ばかりです。

引き出しに行くたびに思うのですが、一部だけでも助けてあげられればよいのでしょうか。殺されていく大多数の子をそこに残して、少しでも引き出せてよしとする、何もしないよりはましだと、皆さん、必死に活動をされ、引き出しと譲渡をされておられます。私たちも同じです。そうやってきました。

 

でも、改めて感じます。この子たちだけ助ける、この子たちだけ選ぶ、これこそ罪深いことではないのでしょうか、と。体制維持に荷担しているのではないでしょうか、と。だんだん感覚が麻痺していっているのではないか、と。みだりに殺しているのではないか、と。行政だから批判を逃れているだけであり、民間人が、人様の犬を、ちょっと飛びついたり噛みついたりしたからといって、数日でさっさと殺してしまったら、それは犯罪です。国や都道府県や権威的な組織が行っているなら、犯罪も犯罪とみなされない。殺処分、との表現はおかしく、ただ「殺している」に過ぎない、これは所有権の侵害であり、動物愛護法44条「虐待」違反であり、本来ならば、1匹だって、みだりに殺してはいけないはずなのです。命ある犬猫を。どんな犬猫も怖がれば噛むし、逃げます。ましてや、保健所やセンターのような常時殺す場所に集められて、犬であれば吠えたり噛んだりは当たり前です。

人間が、おかしい、勝手に譲渡基準などを決めつけて、と思うのです。

 

以下、4年も前に、国会議員たちに提出した要望書を再掲いたします。

 

*******************************

 

                       要望書

 

愛護動物の殺処分は違法です。

今回の動物愛護法改正で殺処分をやめて下さい。

 

内閣総理大臣 野田 佳彦 殿

環境大臣 細野 豪志 殿

厚生労働大臣 小宮山 洋子 殿

衆議院議長 横路 孝弘 殿

参議院議長 平田 健二 殿

民主党ワーキングチーム座長 田島一成 殿

民主党 動物愛護管理法改正を検討する 議員連盟 会長 松野 頼久 殿

事務局長 岡本 英子 殿

顧問 小沢 一郎 殿

小泉 敏昭 殿

民主党 犬猫等の殺処分を禁止する議員連盟 事務局長 生方 幸夫 殿

民主党 犬猫等の殺処分を禁止する議員連盟会長 城島 光力 殿

民主党 動物の福祉を推進する議員連盟 会長 谷 博之 殿

自民党 自民党どうぶつ愛護議員連盟会長 小池 百合子 殿

自民党 自民党どうぶつ愛護議員連盟 事務局長 三原 じゅん子 殿

自民党 自民党どうぶつ愛護議員連盟 幹事長代理 中川雅治 殿  

日本共産党 幹部会委員長 志位 和夫 殿

日本共産党 書記局長 市田 忠義 殿 

新党日本 代表 田中 康夫 殿

公明党 動物愛護管理推進委員会委員長 高木 美智代 殿

社民党 党首 福島 瑞穂 殿

みんなの党 代表 渡辺 喜美 殿

新党きづな 代表 内山 晃 殿

たちあがれ日本 代表 平沼 赳夫 殿

新党改革 代表 桝添 要一 殿

減税日本 代表 河村 たかし 殿

国民新党 代表 自見 庄三郎 殿

新党大地・新民主 代表 鈴木 宗男 殿

沖縄社会大衆党 委員長 糸数 慶子 殿

衆議院環境委員会筆頭理事 田中 和徳 殿

衆議院環境委員会筆頭理事 近藤 昭一 殿

参議院環境委員会委員長 松村 祥史 殿

参議院環境委員会筆頭理事 広田 一 殿

参議院環境委員会筆頭理事 北川 イッセイ 殿

自民党 自民党環境部会長・衆議院環境委員会理事 吉野正芳 殿

公明党 江田康幸 殿

民主 横光克彦 殿

自民 田中和徳 殿

民主 大谷信盛 殿

自民 岸田文雄 殿

民主 近藤昭一 殿

民主 高邑勉 殿

ほか、全国会議員の皆様へ

 

第1 はじめに

わが国では、都道府県(及び政令指定都市、中核市)において、愛護動物の殺処分が何の疑問も持たれることなく、日常的に行われている。茨城県においてもそれは例外ではない。しかし、その殺処分には法的な根拠はない。寧ろ、何の法的根拠もなしに行われる殺処分は、違法であるという外はない。また、現在漫然と行われている殺処分の実態は、動物愛護法によって罰則を以て禁じられている「みだりに殺す」という犯罪行為であるというべきである。さらに、仮に万が一殺処分に適法性があったとしても、現在行われている殺処分の方法は動物に対して著しい苦痛を与える方法であり、違法である。

以下、具体的に述べる。

 

第2 愛護動物の殺害の原則禁止

1 動物愛護法の規定

(1)           愛護動物に関する取扱の基本を定めた法律が、「動物の愛護及び監理に関する法律」(以下「動物愛護法」という)である。この法律は、平成11年法律第221号を以て、従来の「動物の保護及び管理に関する法律」を改正したものである。

(2)           動物愛護法は、その第2条において、「動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、または苦しめることのないようにするのみでなく…」と規定している。また、同法第44条は、愛護動物(これが何かについては、同法第4条第4項に規定があるが、犬や猫はこれに含まれる)をみだりに殺すなどの行為に対して刑事罰を設けて、これを禁止している。

動物愛護法2条は、「何人も」とされているから、都道府県の担当者もこの規定に拘束されることは言うまでもない。

それでは、「動物をみだりに殺す」とは何か、が問題となる。

2 動物を「みだりに殺す」とは何か

一般に「みだりに」とは、「正当な理由なく」という意味と解される。

それでは、「正当な理由」とは何か。この点、「正当」といえるためには、次のような要件を満たすことが必要である。即ち、㈰殺害できる場合が法律で定められていること、㈪その法定の要件が合理的であること、㈫殺害方法が合理的であること、㈬必要な手続を履践していること、の4つの要件を満たす必要がある。

第一の要件は、動物愛護法第2条にも定められるように、動物は生命あるものであり、その生命は人間の生命と同質のものである以上、それを奪うことができる場合というのは、予め厳格に法律で定める必要があると考えられることに基づく。

第二、第三の要件は、動物の生命を奪うことができる場合が法定されていればそれでよいというわけではなく、殺害できる場合及び殺害方法の両方について、その内容が合理的であることを要するということである。尊い生命を奪うことができるという場合を規定するのであるから、当然のことである。

第四の要件は、予め定められた必要な手続(これも適正な手続でなければならないことは勿論である)を履践しなければならないということである。このこともまた、尊い生命を奪うのであるから、当然のことである。

以上のような要件を満たさない動物の殺害は、「みだりに」殺害したものというべきである。そして、現在わが国において行われている愛護動物の殺処分は、上記の要件を満たしていない、違法な殺害行為であるという外はない。

 

第3 殺処分に関する根拠法令はない

1 動物愛護法

(1)           動物愛護法の第5章「雑則」の中に第40(動物を殺す場合の方法)という規定がある(この条文は、旧法第10条に該当する)。そこには、次のように書かれている。

「第40条第1項 動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない。

2項 環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、前項の方法に関して必要な事項を定めることができる。」

上記の規定は、動物を殺さなければならない場合についての殺害方法について、抽象的な規定を置くものであるが、「動物を殺さなければならない場合」とはどのような場合をいうのかについては、全く触れていない。

(2)           また、動物愛護法の第4章「都道府県等の措置等」という章の中に、第35(犬及びねこの引取り)という条文があり、その中に次の規定がある(この条文は、旧法第7条に該当する)

「第35条第1項 都道府県等(都道府県及び指定都市、地方自治法第252条の221項の中核市(以下「中核市」という)その他政令で定める市(特別区を含む。以下同じ)は、犬又はねこの引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない。この場合において、都道府県知事等(都道府県等の長をいう。以下同じ)は、その犬及びねこを引き取るべき場所を指定することができる。

2項 前項の規定は、都道府県等が所有者の判明しない犬又はねこの引取りをその拾得者その他の者から求められた場合に準用する。

・・・・・

4項 都道府県知事等は、動物の愛護を目的とする団体その他の者に犬及びねこの引取りを委託することができる。

5項 環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、第1項の規定により引取りを求められた場合の措置に関し、必要な事項を定めることができる。」

なお、動物愛護法第35条第5項は、旧法では、「内閣総理大臣は…」となっていた。

上記の規定は、所有者から犬又は猫の引取を求められた場合の都道府県の引き取り義務を定めたものであるが、引取った後の措置については、全く定めがない。

(3)           動物愛護法を受けて制定された動物愛護法施行令(政令)、動物愛護法施行規則(省令)はあるが、やはり、動物を殺す場合についての規定は全くない。

(4)           以上に見てきたように、動物愛護法は、動物を殺さなければならない場合に殺す方法についての規定(法律自体には定めがなく、環境大臣に委任されているが)はあるが、どのような場合に「殺さなければならない」かという規定を欠いている。

なお、この環境大臣への委任については、後述する。

2 狂犬病予防法

(1)           狂犬病予防法は、「狂犬病の発生を予防し、そのまん延を防止し、及びこれを撲滅することにより、公衆衛生の向上及び公共の福祉の増進を図る」ことを目的として制定された法律である(1)。この法律は、犬の他、「猫その他の動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、鶏及びあひる……であって、狂犬病を人に感染させるおそれが高いものとして政令で定めるもの)に適用があるとされており(212)、この規定を受けて、狂犬病予防法施行令1条は、「狂犬病予防法……第二条第一項第二号 の政令で定める動物は、猫、あらいぐま、きつね及びスカンクとする」と規定している。

(2)           狂犬病予防法11条は、「第9条第1項の規定により隔離された犬等は、予防員の許可を受けなければこれを殺してはならない」と規定している。同法91項の規定は、「前条第1項の犬等を診断した獣医師又はその所有者は、直ちに、その犬等を隔離しなければならない。ただし、人命に危険があって緊急やむを得ないときは、殺すことを妨げない」というものであり、そこで言う「前条第1項の犬等」とは、「狂犬病にかかった犬等若しくは狂犬病にかかった疑いのある犬等又はこれらの犬等にかまれた犬等」ということである(81)

また、同法18条の21項は、「都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため緊急の必要がある場合において、前条第1項の規定による抑留を行うについて著しく困難な事情があると認めるときは、区域及び期間を定めて、予防員をして第10条の規定によるけい留の命令が発せられているにもかかわらずけい留されていない犬を薬殺させることができる。この場合において、都道府県知事は、人又は他の家畜に被害を及ぼさないように、当該区域内及びその近傍の住民に対して、けい留されていない犬を薬殺する旨を周知させなければならない」という規定をしている。

(3)           以上のように、狂犬病予防法においては、一定の場合に犬や猫等を殺害することを認めているが、殺害することができる場合が限定されており、その手続についても規定されている。但し、この法律にも、どのような場合に予防員が殺害の許可をすることができるのかについて具体的な基準の定めがない等の不備がある。

しかし、この法律は、犬や猫を殺害することができる場合を極めて限定して規定しており、現在わが国の各地で行われている愛護動物の殺処分の根拠となるものではない。

3 犬及びねこの引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置(平成18120日環境省告示第26)

(1)           既に述べたように、動物愛護法第35条第5項は、環境大臣は、同条第1項の規定による引取を求められた場合の措置に関して必要な事項を定めることができるとしている。そして、「犬及び猫の引取並びに負傷動物等の収容に関する措置(平成18120日環境省告示第26)」という環境省告示があるが、これは、動物愛護法第35条第1項及び第2号の規定による犬又はねこの引取り並びに36条第2項の規定による疾病にかかり、又は負傷した犬、ねこ等の動物及び動物の死体の収容に関する措置を定めたものであるとされている(同告示前文)

なお、この告示は、昭和5045日内閣総理大臣決定による「犬及びねこの引取り並びに負傷動物の収容に関する措置要領」を改正したものと見られる。

(2)           この「措置」という告示には、「第4 処分」という項目があり、そこには、「保管動物の処分は、所有者への返還、飼養を希望する者又は動物を教育、試験研究用若しくは生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供する者への譲渡し及び殺処分とする」とある。なお、この「処分」については、特に猫の場合における、「避妊・去勢をした上でのリリース」が含まれていないという問題点がある。また、実験動物としての払い下げが堂々と記載されている点は、731部隊を設置し、それについて何らの検証も反省もしていない国家の面目躍如というところであろう。

(3)           一読すれば明らかなように、この「措置」に定められた「処分」は、殺処分だけに限られない。従って、この措置では、処分=殺処分ではないことが明らかである。そして、この「措置」においても、どのような場合に殺処分とすべきかという規定はない。

(4)           寧ろ、この「措置」の「第3 保管、返還及び譲渡し」という項目では、動物についてできる限り生存の機会を与えるよう努めること、保管の期間はできる限り保管動物の所有者や飼養を希望する者等の便宜を考慮して定めるように努めること、などという規定がなされている。従って、この措置全体の趣旨は、簡単に動物を殺すことは想定されていないものといえる。

(5)           ところで、この「措置」の「第3」の第3項には、「所有者がいないと推測される保管動物、所有者から引取りを求められた保管動物及び所有者が発見できない保管動物について、家庭動物又は展示動物としての適性を評価し、適性があると認められるものについては、その飼養を希望する者を募集する等により、できるだけ生存の機会を与えるよう努めること」という規定がある。

この規定は、「家庭動物又は展示動物としての適性」がないと認められる動物は殺してもいい、「適性」がある動物であっても場合によっては殺してもいい、という意味にも取れるのであり、殺処分が許される場合を規定しているようにも見える。

しかし、この規定には、次のような問題点がある。即ち、第一に、この規定は、殺処分ができる場合を明文で定めたものではないから、「適性」の有無が殺処分の可否の基準であるとは必ずしも定めた規定ではない。第二に、この規定は、結局は、「適性」の有無に拘わらず、殺処分をすることができるということを述べているのであり、殺処分ができる場合を明確に定めたものとはいえない。第三に、仮にこの規定が殺処分をすることができる場合を定めたものだとしても、「適性」というような不明確で且つ恣意の入りやすい基準は、命のある存在である愛護動物の命を奪える基準として妥当性を欠いている。第四に、愛護動物の命を奪える場合を、告示のような著しく下位の法令で定めること自体に問題がある。

以上のような点からいえば、この規定は、殺処分をすることができる場合を定めた根拠法令であるとはいえない。なお、補足的に述べれば、現実に行われている殺処分の実態は、「適性」の有無の判断などは殆ど行われることはなく、次から次へと動物たちは無残に殺害されているのである。

4 動物の殺処分方法に関する指針(平成191112日環境省告示第105)

(1)           また、「動物の殺処分方法に関する指針」という環境省告示がある。この「指針」は、動物愛護法402項の規定を受けて、環境大臣が定めたものである。

この「指針」は、もともと、平成774日総理府告示「動物の処分に関する指針」として制定され、その後の平成12121日環境省告示第59号による改正等を経て、平成191112日環境省告示第105号により、上記の名称となったものである。

(2)           内容も、従前は「動物を処分しなければならない場合にあっては…」というような言い方がなされていた。この「指針」の内容は、専ら殺処分の方法について規定するものであったため、処分=殺処分ということになっていた。しかし、改正により、この「指針」は飽くまでも殺処分を行う場合を規定するものであることが明確にされた。従って、この指針からも、処分=殺処分ではなく、殺処分は処分の一つの形態に過ぎないことが明らかである。

(3)           また、この「指針」においても、殺処分はどのような場合に行うことができるのかということについては全く規定がない。

5 都道府県等の条例

(1)           動物愛護法第9条に「地方公共団体は、動物の健康及び安全を保持するとともに、動物が人に迷惑を及ぼすことのないようにするため、条例で定めるところにより、動物の飼養及び保管について動物の所有者又は占有者に対する指導その他必要な措置を講ずることができる」、という規定がある。

条例で動物を殺害する場合を規定できるのかという点、仮に条例が動物愛護法の委任を受けていると考えたとしても同法9条の上記規定が抽象的すぎるために、委任条項として有効かという点等に問題がある。そのようなことを念頭に置いた上で、一応、条例が殺処分の根拠となり得るかどうかという点を考えてみる。

以下では、茨城県の条例を例にとって述べる。

(2)           茨城県には、「茨城県動物の愛護及び管理に関する条例」という条例がある(昭和54319日茨城県条例第8号、平成12年条例第80号によって改称したということである)

(3)           まず、この条例には定義に関する条項は第2条に置かれているが、「処分」の定義がない。

(4)           次に、同条例第11条に「措置命令」という規定があり、「知事は、動物……が人に危害を加えたとき、又は加えるおそれのあると認めるときは、その動物の所有者に対し、次に掲げる措置を命ずることができる」とし、その第1号に「殺処分すること」としている。この規定は、県が殺処分できる場合を明文で限定して規定している。

しかし、この条文は、県が現在行っている殺処分の根拠とはなっていないことは明らかである。

(5)           また、同条例第12条に「飼犬の抑留等」という規定がある。この条文の第1項は、「知事は、第5条第1項の規定に違反して、繋留していない飼い犬があると認めるときは、当該職員をしてこれを捕獲し、抑留させることができる」とされている。そして、その第4項に、「知事は、飼い犬の所有者が前項の期間内にその犬を引き取らないとき、又は第2項に定める公示期間満了の日の翌日までにその犬が引き取られないときは、これを処分することができる。……」という規定がある。茨城県の公示期間は、この条例第12条第2項によって、抑留した後2日間とされている。

上記12条の規定上の文言は「処分」ということであり、「殺処分」ということにはなっていない。寧ろ、同条例は、11条で「殺処分」という言葉を使用していることに鑑みれば、「処分」と「殺処分」を明確に区別して用いていることが明らかであり、この条例第12条は、殺処分の根拠とはなり得ない。

また、12条において処分に関する規定が置かれているのは、放し飼いにされている飼い犬だけであり、飼い主が「飼えなくなった」と言って持参した犬等についての処分に関しては、何らの規定もない、ということになる。ねこの処分については全く規定がない。従って、茨城県が飼い主が持参した犬や、ねこについて殺処分を行うことについては、条例上の根拠はないというべきである。

(6)           以上は、茨城県の例であるが、その他の多くの都道府県や政令指定都市においても、大同小異の取扱になっているものと思われる。

 

6 まとめ

(1)           国の法律には、極めて限定された場合を除けば、どのような場合に動物の殺害をすることができるのか、どのような場合に殺処分にすることができるのかという要件や手続を定めたものはない。また、法律の規定を受けた下位規範である政令や省令、告示等においても同様である。国の法令上、わが国において日常的に行われている愛護動物の殺処分に関する根拠法令はないものというべきである。

(2)           一方、動物愛護法においては、愛護動物をみだりに殺すことは刑事罰を以て禁じている。従って、愛護動物を、根拠法令も基準もなしに漫然と殺処分に付することは、「みだりに殺す」ことに該当する違法性の高い行為であると言わねばならない。

(3)           また、茨城県の条例においても、限定された場合を除けば、動物の殺処分をどのような場合に行ってよいのかという規定はない。茨城県においては、条例もまた、殺処分の根拠とはなり得ない。

 

第4 現在行われている殺処分に合理的な理由はない

1 はじめに

第2、2において、動物を「みだりに殺す」とは、「正当な理由なく殺す」という意味に解されると述べた。そして、「正当な理由」があるといえるためには、㈰殺害できる場合が法律で定められていること、㈪その法定の要件が合理的であること、㈫殺害方法が合理的であること、㈬必要な手続を履践していること、の4つの要件を満たす必要がある、と述べた。

第3では、わが国では上記の㈰の要件がそもそも備わっていない(しかも、法律だけではなく、それよりも下位規範においても殺害できる場合の定めがない)ということを述べた。㈰の法定の要件がない以上は次の㈪の要件について述べる必要はないのであるが、現実に行われている殺処分の実態は、合理的な理由など全くなしに漫然と行われているので、その点について指摘しておく。

2 殺処分を正当化する合理的な理由とは

殺処分が正当化されるための合理的な理由とは、どのような内容でなければならないか。それは、次のようにいくつかの場合に限られるものと解される。

第一に、前記の狂犬病予防法11条に規定される場合のように、人間や他の動物等の生命・身体等に危険が及ぼされるおそれがある場合である。

第二に、治療を加えても生存することができず、又は治療することが却って苦痛を与える結果になる場合等、死期を早めることが適当であると判断される場合である(前記の昭和5045日内閣総理大臣決定による「犬及びねこの引取り並びに負傷動物の収容に関する措置要領」中にはこのような規定があった)

第三に、どのような場合であっても、殺処分以外の他の方法が考えられないということが必要である。

なお、前記の平成18120日環境省告示第26号に定められているような「家庭動物又は展示動物としての適性」というような基準は、合理性はなく、殺処分を許容する基準とはなり得ない。「適性」という言葉は不明確であり、判断者の恣意が入りやすいし、捕獲ないし収容されたばかりの状態では「適性」の判断を適正に行うことは到底できないし、時間をかけて信頼関係を築くことも可能な場合も多いからである。また、「適性」がなくても、公設シェルターで終生飼育するという選択肢も考え得るし、猫の場合は、「避妊・去勢をした上でのリリース」という選択肢も考え得るのである。

3 現在行われている殺処分の実態

現在行われている殺処分の実態は、上記のような合理的な理由が要求されることなく、漫然と行われている。

合理的な理由のない殺処分は、「みだりに殺す」行為に他ならず、犯罪行為を構成する違法な行為であるという他はない。

 

第5 殺処分方法の違法性

1 はじめに

既に述べたように、動物愛護法401項は、「動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない」と規定している。

現在行われている愛護動物の殺処分は、動物に対して非常な苦痛を与える方法であり、この観点からしても、動物愛護法に違反する違法な方法である。

2 現在の殺処分の方法

(1)           現在茨城県を始め、多くの都道府県や政令指定都市において行われている殺処分の方法は、狭いガス室に閉じ込めて、二酸化炭素を注入して窒息死させるという方法である。

この方法を用いた場合、動物たちは、520分程度の時間、著しい苦悶を味わいつつ、絶命する。

そればかりではなく、動物たちは、殺処分に至るまでの間、不安と恐怖に怯えながら過ごすのであり、ガス室に入れられる際も強制的に入れられるのであり、暴行を受けたり乱暴な取扱をされることも往々にしてあるのである。

(2)           一方、仮に動物たちの命を奪う場合であっても、食物の中に薬剤を混ぜる等の、より苦痛の少ない方法が多々ある。

3 小括

以上のように、現在行われている殺処分は、その方法という点から見ても動物愛護法に違反する違法な方法であると言わざるを得ない。

 

第6 まとめ

以上述べてきたところから明らかなように、現在多くの都道府県や政令指定都市において行われている愛護動物の殺処分は、法的な根拠はなく、合理的な理由もなく、その方法も違法である。このような殺処分を行うことは、極めて違法性が高い行為であるといわねばならない。行政の名の下において行われているこのような愚劣な行為は、一刻も早く全面的に止めるべきである。

我々は、残酷な殺処分方法や殺処分を容認する改正案に対して反対の立場をとる。

そもそも、殺処分の原因は無責任な飼育者にある。そして、それを放置する法律にある。責任をもって愛護動物を終生飼養させるためには、「飼育免許制度」の法律への導入が不可欠である。          以上

 

 

 

担当:坂本博之(NPO法人 動物愛護を考える茨城県民ネットワーク所属)

野中龍彦・野中公彦(宮崎市民オンブズマン)


*******************(要望書ここまで)

お問い合せ

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全国動物ネットワーク事務局

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